過去のレーシックレポート情報→ 2008年度 │ 2009年度
※2011年の情報は、ホームページに反映しています

遠谷眼科 遠谷 茂
この資料は、2010年4月7日から9日までアメリカのボストンで行われた
World Cornea Congress(世界角膜会議、5年に1度開催)、その後続いて9日から14日まで行われた
ASCRS(アメリカ白内障屈折矯正手術学会)、そして9月4日から8日までフランスのパリで行われた
ESCRS(ヨーロッパ白内障屈折矯正手術学会)に参加して得た最新の学会情報の中から、
医学的に難しいことは抜きにして、今すぐ患者さんの役に立つと思われる情報をわかりやすく
まとめたものです。
これらの情報は、海外の医師が英語で語る生の情報ですから、新しすぎてまだ日本語には
なっていないものが多いですし、おそらくこれからも日本語にはならないものも多いと思います。
ここに掲載した情報は、日本全国どの施設でレーシックを受けるかを問わず、これからレーシックを
受けたいと考えている全ての人に役立つような、バイアスのないものを選びました。
特に情報の質に関しては、世界最大で権威のある眼科学会において、トップレベルの著名な医師達が
互いに意見を述べ合うシンポジウムや、学会が主催する教育コースで出てくる情報に絞りましたので、
巷にあふれる医学的根拠が確かでない宣伝情報とはまったく質が違うということを強調したいと思います。医療情報はその出所と開示の方法が非常に大切です。
この資料をご覧になったすべての患者さんが、最新かつ客観的な眼科医療情報を知ってくださることで、
インターネット上にあふれる歪曲された誇大情報に惑わされることなく、正しく適切な眼科治療を
選択してくださることを願っています。
海外で実施された、レーシックを受けた患者さんに対する満足度調査の結果
ASCRSで4月9日に行われたSteven C. Schallhorn医師の
プレゼンテーションによれば、18歳から74歳のレーシックを受けた
15,409人(29,982眼)の患者さんに対して手術後1ヶ月の時点で
行った調査では、レーシックを受けて「very satisfied(非常に満足)」と
答えた人が80.5%、「fairly satisfied(まあまあ満足)」と答えた人が
15.5%、「neither(どちらでもない)」が1.7%、
「dissatisfied(不満足)」が1.5%、「very dissatisfied(非常に不満足)」
が0.8%ということでした。大ざっぱにいえば、96%という大多数の人は
レーシックに満足していますが、残りの4%という少数の人々は満足していないという状況です。
また、年代別では、20代、30代の人で不満足だと答えた人は1%台であるのに比べ、40代以降になると
不満足だと答えた人の数字は3%以上になるとのこと、手術後の視力別では、1.0以上(米国では20/20)
の裸眼視力が出た人では不満足だと答えた人が1%台なのに比べ、0.75(20/25)では6.2%、
それ以下の視力では9%の人が不満足だと答えたとのことでした。
この結果と似たような調査結果を、別のところでも聞くことができました。
ASCRSで4月12日に行われたKerry D. Solomon医師のプレゼンテーション内容です。
1994年から2008年までに発表された309の文献(研究が行われた場所:北米114、ラテンアメリカ17、
ヨーロッパ100、オーストラリア5、アジア65、アフリカ6、不明2)を分析した結果、
レーシックに満足している人は95.4%、不満足な人は4.6%だという結果がでたとのことでした。
また、別の103人に対して実施したQuality of Life(生活の質)調査の結果では、手術後3ヵ月の時点で
質問票に答えた84人のうち、満足だという人が77人、不満足だという人が4人という結果で、
不満足である4人の理由を尋ねると、視力の矯正不足を挙げた人が2人、ドライアイが1人、
ハロー(夜間、光の周りに光の輪ができる現象)が1人だったそうです。
Solomon医師の結論としては、レーシック後の満足度と、UCVA(Uncorrected Visual Acuity,
裸眼視力のこと)、ドライアイ、夜間ヴィジョン現象(光がギラギラまぶしい、光の輪が見えるなどの
現象)、年齢との明らかな関連はないようだとのことでした。
しかし、年齢が上の人の方が(老眼のためか?)レーシック後に不満を感じる傾向があるようだ
という意見でした。
老眼世代の満足度が若い世代の満足度よりも低い傾向があるという点には、私も実際に老眼世代の
患者さんの反応を見ていて同感です。
若い世代ならレーシックを受けた後は近くも遠くも見えるようになりますが、老眼世代は
「老眼のために近くが見にくい」という状態が手術の前よりもはっきりしますし、加齢とともに
ドライアイ傾向も強まって眼の機能が低下しますから、若い世代に比べると視力に対するハンディは
どうしても大きくなってしまうのです。
最初に挙げたSchallhorn医師の調査結果でも、20代や30代に比べて40代以降の人の方が、
不満であると答える割合が何倍にも高くなっているので、老眼世代の満足度が若い世代よりも低い
ということは、世界共通の人種を問わない現象だといえるでしょう。
ですからレーシックを受けるときには、大多数の人が満足している中で、不満足だという人が
現実には全体の5%ぐらいはいるということに目をつぶらずに、自分の年齢、ライフスタイル、
職業などで必要とされる視力について、さまざまな観点から丁寧にきちんと考えた上で決断してほしいと
思います。
ここまでは、一般の人のレーシックについて客観的なデータを見ながらお話してきましたが、
次からはアメリカの職業軍人が受けたレーシックについてお話したいと思います。
まずASCRSで4月9日に行われたDavid J. Tanzer医師によるプレゼンテーションの内容を
紹介しましょう。
現在アメリカでは、国防総省のリフラクティブ・サージェリー・センター(屈折矯正手術センター)が
Army(陸軍)に12、Navy(海軍)に7、Air Force(空軍)に6の、合計で25か所あり、これまでに
軍の関連施設で行われた屈折矯正手術の累計は、2005年ではおよそ15万件、2006年ではおよそ
18万件、2007年ではおよそ22万件、2008年でおよそ26万件、2009年ではおよそ31万件でした。
件数の多さからいうと、Army(陸軍)、Navy(海軍)、Air Force(空軍)の順です。
プレゼンテーション内にある2009年の数字をグラフから読み取ると、だいたいArmy(陸軍)で
14万件、Navy(海軍)で10万件、Air Force(空軍)で6万件になっています。
レーシックを受けたNavy(海軍)のパイロットに、手術後3ヵ月の時点で感想をきいた結果では、
「very helpful(大変役立っている)」という人が8割強、「same(同じ)」だという人がほんの少し、
「very hindered(非常に妨げになっている)」という人はいませんでした。
そしてNavy(海軍)のパイロットたち(同僚)にレーシックをすすめるかという質問には、
「definitely yes(絶対に勧める)」と答えた人が99%に近い数字でした。1~2%ぐらいの人は、
「definitely yes(絶対に勧める)」と「same(同じ)」の間でした。
一方、「definitely no(絶対に勧めない)」という人、また、「same(同じ)」と
「definitely no(絶対に勧めない)」の間の人はいませんでした。
ちなみに、アメリカ軍の関連施設では、FDA(U.S. Food and Drug Administration、
アメリカ食品医薬品局)の認可がおりている複数のメーカーのエキシマ・レーザー(アメリカ製のものや
ヨーロッパ製のもの)が同時に使われています。
次にASCRSで4月9日に行われたChaz Reilly医師のプレゼンテーションの
内容を紹介しましょう。Air Force(空軍)のお話が中心でしたが、
Reilly医師は大画像スクリーンに映し出されるF22戦闘機を示しながら、
「軍人に対するレーザー屈折矯正手術は、コズメティック・サージャリー
(美容整形手術)ではない、軍人に戦闘で有利になるようにするため、
敵に見つけられる前に敵を見つけるための能力、戦闘でのサバイバル率を
上げるための機能的手術だ、ナイト・ビジョン・ゴーグルをつけて
夜間歩き回ること、砂嵐、山、ほこり、煙の中のような苛酷な環境で
戦闘任務を果たすことができなければならない」とおっしゃっていました。
Air Force(空軍)で行われている屈折矯正手術の種類としては、
現在のところ7割がPRK, 3割がレーシックだそうですが、レーシックの割合は今後増えていくと
思うということでした。ちなみに、この資料のはじめのレーシック後の満足度調査のお話をされた
Schallhorn医師は、かつてNavy(海軍)に30年以上在籍し、メディカル・スクール(医学部)に
行く前はF14戦闘機のパイロットで、その後は「トップガン(海軍の戦闘機パイロット養成機関で、
その卒業生はエリート中のエリートだといわれる)」の教官も務められたそうです。
ASCRSではアメリカの軍の関連施設で手術を手がける医師のプレゼンテーションがいくつもありますが、
その内容を聞いていると、PRKやレーシックという医療技術が人々にとって大きく役にたつ医療であると
確信して研究に取り組んでいることが、ものすごい勢いで伝わってきます。
余談ですが、Schallhorn医師が別の講演でおっしゃっていたことを、レーシックという医療技術が
進化した理由の一面をよくあらわしていると思うので、ここで紹介しましょう。
Schallhorn医師によれば、NASA(アメリカ航空宇宙局)はずいぶん前からレーザー屈折矯正手術に
興味をもっていたそうです。
それはなぜかというと、宇宙飛行士たちの多くがメガネやコンタクトレンズを使っているという現実の
問題があったからです。宇宙では重力がないので顔からメガネが外れて浮いてしまうそうです。
コンタクトレンズをはめることも、目薬をさすことも、とても大変だそうです。
目薬をさすときは、宇宙空間上に目薬を落とし、そこに浮いている目薬に自分の眼をドッキング
させていくそうです、またコンタクトレンズには感染病の問題があります。
「それならメガネをかけなくてもいいような、もとから視力のいい人を宇宙飛行士に選べば
いいじゃないですかと普通の人ならいうかも知れないけれど、答えはシンプル、NASAは本当に最高の
宇宙飛行士がほしいのです(視力の良さよりも能力の高さの方が重要だということ)」と
おっしゃっていました。
アメリカでは、レーシックという医療技術が国の防衛や宇宙開発政策とも関わっているため、
さまざまな特殊な環境でも効果と安全性が認められるかどうかの詳しい検証が行われました。
その結果、厳しい条件をクリアして、いまやレーシックは多くの職業軍人や宇宙飛行士が受ける手術と
なったのです。
しかし、職業軍人や宇宙飛行士と、一般の人では、身体能力や生活環境が大きく違うことが
予想されますから、そもそもレーシックに対して求めているものが違うかもしれません。
ですから、その満足度を同じレベルで測ることもできないでしょう。
たとえば、レーシック後の満足度調査の結果で、軍人に対する調査では不満足であるという答は
出ていないにもかかわらず、一般の人に対する調査では数%程度の人に不満足だという答が
でているという点について考えてみると、断定的なことはいえませんが、職業軍人と一般人では
許容できないものが違うということがあるのかも知れません。
レーシックを受けた多数の人が満足だと答えるなかで、少数の不満足だという人にならないように
するためには、やはり手術に踏み切る前に、レーシックの長所と短所を天秤にかけて、自分の年齢、
職業、ライフスタイルなどとマッチするかどうかを、よく検討していただきたいなと思います。




