多焦点眼内レンズが開発された当初は、レストアあるいはリズームのどちらか1種類のレンズを両眼に入れる手術が行われていました。その結果、それぞれのレンズが得意とする見え方に特徴があることがわかりました。レストアを開発したAlcon社によれば、レストアでは80%の人が手術後は「全くメガネを使わない」と回答しています
(http://www.acrysofrestor.com/freedom-from-glasses/quality-vision.asp)
一方リズームを開発したAdvanced Medical Optics社によれば、リズームでは92%の人が手術後は「全くメガネを使わないか、ほんのときどきメガネを使う」と回答しています。「近くではメガネに頼らない」と回答した人は80%を少し超える数字なので、そうでない20%近くの人は、近くを見るときにはメガネを使っているものと思われます。
(http://www.rezoomiol.com/your_vision_with_rezoom.html)
ここ数年間の研究発表によると、レストアは近くと遠くが見やすく、リズームは中間(50cmの距離ぐらいから)と遠くが見やすいことがわかりました。また多焦点眼内レンズを入れる手術をした後、全くメガネから離れられるかどうかは、脳の順応力などの問題で個人差があることもわかりました。
ところで、関西の人たちが好む食べ物に、「お好み焼き」と「焼きそば」という2つの違ったソース系の食べ物がありますが、どちらを食べたいかお店で非常に迷ったとき、それを解決する方法が1つあるのはご存知の人も多いでしょう。それは「モダン焼き」という、「お好み焼き」と「焼きそば」が合体した食べ物を注文することです。「モダン焼き」は、ソース系の食べ物が食べたいという当初の目的が無事達成され、おまけに「お好み焼き」の味と「焼きそば」の味が同時に楽しめる、非常に合理的な選択です。

これと同じような発想で、違う種類のレンズを片目ずつ入れて、その性能を合体させる試みをした医師がいます。2006年の米国白内障屈折矯正手術学会(ASCRS)におけるセミナーで発表された、レオナルド・アカイシ医師とペドロ・パウロ・ファブリ医師によるデータによれば、手術後メガネに頼らない割合が、両眼にレストアを入れた場合は100人中89%、両眼にリズームを入れた場合は100人中75%、レストアとリズームを片眼ずつ入れた場合は、88人中100%ということでした。種類の違うレンズを片方ずつ眼内に挿入する方法は「カスタム・マッチ」あるいは「ミクシング・アンド・マッチング」などと呼ばれています。
それから2年たった今年、2008年4月に開催された米国白内障屈折矯正手術学会(ASCRS)では、「(多焦点眼内レンズの開発で)白内障手術は新しい時代に入った」といわれていました。前述の2006年に発表されたアカイシ、ファブリ両医師の研究も、そのデータの数は3倍になり、いろいろな医師がそれぞれの過去3年間の1,000にも及ぶデータと経験に基づき、どのレンズを、どういう場合に、どのように使うとよいかということを、わかりやすく発表していました。両眼に違う種類のレンズを入れる「カスタム・マッチ」も、臨床では実際のところかなり積極的に行われていることもわかりました。もちろん、この報告は外国人のデータに基づくものですから、日本人でも全く同じ結果がでるかどうかはわかりません。別々のレンズを同じ人の眼に挿入するという発想も、私のような農耕民族タイプの日本人では、およそ考えつかないような革新的で大胆なものだと思います。しかし医学というものは、そのときの常識を超えるような試みも時には経ながら、進歩していくものかも知れません。ここでは、2007年に厚生労働省の認可がおりた米国製のレストアとリズームのお話をしていますが、これらのレンズ以外にも欧米で開発されて、実際に臨床で使われている多焦点眼内レンズがいくつもあります。そのようなレンズは、日本でも数年たてば認可が下りる可能性が高いとも思われますが、現在のところ日本で認可されているレンズはレストアとリズームの2種類だけです。今年も海外の大きな学会では、さまざまな多焦点眼内レンズを用いた臨床研究の結果が、どんどん発表されてくることでしょう。ドイツでは、過去の白内障手術で単焦点眼内レンズを挿入している眼にも、新たに追加挿入することで多焦点眼内レンズと同じような機能をもたせるレンズが使われ始めたと聞いています。
※最新情報:
2008年8月に、Advanced Medical Optics社の多焦点眼内レンズ『テクニス・マルチフォーカル(Tecnis Multifocal)』が厚生労働省の認可をうけました。これで日本国内で認可をうけた多焦点眼内レンズは『レストア(ReSTOR)、『リズーム(ReZOOM)』、『テクニス・マルチフォーカル(Tecnis Multifocal)』の3つになりましたので、自分のライフスタイルに合わせたレンズの選択方法『カスタム・マッチ』の幅も広がりました。
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