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進化し続ける白内障手術
 
医療法人社団秀明会 遠谷眼科 遠谷 茂
 

遠谷眼科 遠谷 茂 ここ数年、患者さんや友人から「白内障手術って、簡単ですぐ終わるのでしょう」といわれることが増えてきました。私もこれまで20 年以上白内障手術を行い、およそ2 万件の執刀経験もありますので、自分の意見を述べさせて頂いてもよいかなと思いますが、正直にいうと、このようなことをいわれるたびに本当にがっかりしてしまいます。なぜなら、手術の質の追求には、表からは決して見えない工夫や努力があるからで、「簡単」とひとことでいってもらいたくないなあと思うからなのです。「美しい手術」、「無駄のない手術」といえるような手術は確かに存在しています。手術は生き物のように毎日進化しているのです。

 先日、白内障が進みすぎて緑内障発作を起こした方が突然来院され、割り込みで緊急手術をしました。この方は、白内障になっている眼が長い間見えていないにもかかわらず、医師の診察を受けられていませんでした。いきなり眼が痛みだしたので来院されたのですが、進行しすぎた白内障は水晶体が膨らむため、周辺の組織を圧迫し、緑内障を突然併発するのです。これを放置してしまうと1両日で完全に失明してしまいます。「どうしてもっと早く医師の診察を受けられなかったのですか」とたずねましたら、「もう片方の眼が見えていたから」という話でしたので、もっと眼を大切にしてほしいと思いました。この例は白内障でも極度に進行したものの例ですが、このような状況になると本当に危険です。10 人にひとりは難しい白内障の方が必ずいらっしゃいますし、たとえ手術が成功しても、そのあと失明に至ることもある眼内炎という合併症が、およそ1,000 人から2,000 人にひとりの割合で起こります。手術のあと、100人が100 人とも良好な結果を得るという目標のもと、まさかの事態には適切な判断を瞬時にできるように、毎日の精進が必要です。

 白内障手術器械や眼内レンズの性能は、世界のメーカーのしのぎを削る開発競争で、どんどん進化しています。それに伴って器械の性能を最大限に生かすための工夫や技術が手術に必要です。患者さんの眼はひとりひとり病気の状況が異なり、手術の方法も微妙な調整が要求されます。卓越した手術の技をお持ちの、他の先生方のお知恵を拝借すると、これまでどうするべきかと考えていた問題を、うまく解決できそうなアイデアが頭にひらめくことがよくあります。私の白内障手術をさらに改善していくため、ここ1 年ぐらいの間、三好輝行先生(三好眼科、広島県福山市)、藤田善史先生(藤田眼科、徳島県徳島市)、赤星隆幸先生(三井記念病院、東京都千代田区)の順番で手術見学の旅をしましたが、今回の旅でもまた、新しい発見や手ごたえを得ることができました。

 同じ名前の料理を作るときでも、料理人が違えば使う道具や火加減が違います。最近の料理の世界では、フランス料理の三ツ星レストランと京都の伝統ある料亭の料理人が、ジャンルを超えて互いの料理を教えあうという交流が行われているようですが、その道を究めている方々が切磋琢磨することは、とてもいいことだなと思います。これと同じようなことが手術の世界においてもいえると私は思います。白内障手術の世界にも、医師によって独自の方法があります。世界で活躍する医師達が、工夫に工夫を重ねた結果、ベストだと考えて使う技術を間近で見ることは、自分の手術を客観的に見つめ直すことを可能にしてくれます。

 15 年ほど前、「フェイコチョップ法」の創始者である永原國宏先生(聖母眼科、香川県坂出市)の手術を見学させていただいたのですが、先生は、当時ではまだ珍しい2 台のベッドを交互に使う方法で、淡々と無駄のない手術をなさっていました。手術室の上の階にはトレーニング設備があり、それを見た私は、手術では軽いメスしか持たないのに、最高のコンディションで手術に臨むため、常に体を鍛えていらっしゃるのだ、と驚いたことを覚えています。永原先生の開発されたフェイコチョップ法は、現在多くの白内障手術をする医師達の基礎となっています。

 先ほど私は、手術の方法は医師によって独自の方法があると述べましたが、赤星隆幸先生は永原先生のフェイコチョップ法とは異なる「プレチョップ法」という方法を開発されています。フェイコチョップ法とプレチョップ法の違いは、簡単にいうと手術のときの水晶体の分割のしかたの違いです。たとえば、丸い雪の玉を分割することを想像してください。永原先生のフェイコチョップ法は、左手のスコップで雪の玉を押さえ、右手で別のスコップを持って遠くから手前に中心めがけて引き寄せ分割する感じ、赤星先生のプレチョップ法は、大きなハサミを雪の玉の中心に入れて、左右に押し分けながら分割する感じです。水晶体を分割するときにはどちらの方法が優れているか、というような話ではないのです。ですから、それぞれの方法をよく研究して、長所を活かすことが大切なのです。

 一昨年、三好輝行先生のところに伺いました。三好先生の手術は、ご趣味が手品であることも関係するのか、手術も本当に手品のような感じです。手術の中に常に最先端の工夫が隠されているのです。私は過去に何度も三好先生の手術の見学に伺っていますが、毎回手術の方法がどんどん進化しているのには本当に驚きます。三好先生は2007 年アメリカ白内障屈折矯正手術学会(ASCRS)の「フィルム・フェスティバル」において、グランプリを受賞されました。この「フィルム・フェスティバル」は、研究や手術の過程を編集した映像のコンペティションで、三好先生の受賞は2005 年に続き2 度目で、学会でも初めてのことです。現状に決して満足されない三好先生の意欲には、本当に頭が下がる思いです。

 2007年のはじめ、藤田善史先生のところに伺いました。藤田先生の手術は、ご自身のイメージと同じく爽やかで鮮やかです。モーツアルトの音楽のように心地よい流れの手術です。1999 年よりミャンマーでボランティアとしての眼科医療活動もされていますが、ミャンマーのような医療後進国では、まだまだ技術が追いつかず、白内障や緑内障で失明する方々がとても多いのです。藤田先生の「流れるような白内障手術」は、ミャンマーの方々を失明から救うとともに、現地の医師達を大きく啓蒙しています。藤田先生は、ご自身の白内障手術に対する想いを『白内障手術に魅せられて』という本に記されています。その本からは、先生の情熱がまっすぐ心に伝わってきて、私も「よし、がんばるぞ!」という気持ちになるのです。

 2007年の夏、赤星隆幸先生のところに伺いました。赤星先生は、三好先生や藤田先生の手法とは異なる、ご自身で開発されたプレチョップ法を使われ、高速で走るレーシング・カーを運転する、F1 レーサーのような手術をされています。その秘密を探ることは、手術のプロセスをひとつひとつ検証するうえで、とても有益だと思います。赤星先生は手術方法や手術器具にどんどん改良を重ねられてその研究は世界でも注目され、各国からの招聘で教育講演や公開手術も行われています。

 私事で恐縮ですが、私が眼科医となった頃の日本における白内障手術は「一晩頭を砂枕で固定し、ベッドで仰向けになって安静を保つ」のが常識でした。しかし、アメリカやカナダでは日帰り白内障手術が広く行われるようになり、それを参考にして私は1986 年(昭和61 年)、兵庫県で初めて日帰り白内障手術の実施に踏み切りました。このときはアメリカやカナダで日帰り白内障手術の実際を、自分の眼で納得いくまで確かめました。カナダでは特に、世界的に有名なギンベル先生の日帰り白内障手術を見学しました。(ギンベル先生は1999 年にアメリカ白内障屈折矯正手術学会により選ばれた、20 世紀における25 人のトップ眼科医のうちの一人です。)その頃は、日帰り白内障手術が日本ではまだ珍しかった時代でしたから、私も自分の目指す医療が心ない批判をうけるという悔しい思いもしました。しかしそのような私を一番励ましてくれたのは、早朝から長蛇の列になって、静かに診察時間の開始を待ってくださった白内障の患者さん方でした。兵庫県からだけではなく、四国や九州などから何時間もかかって来てくださった方もいらっしゃいました。自分を頼りにしてくださる患者さん方がいらっしゃる限り、どんなことがあっても頑張ろうと思いました。あれから20年経った今では、日帰り白内障手術の方が入院手術よりも主流になっています。また手術器械と手術方法の進化により、昔は15ミリぐらいあった傷口も、今は2 ミリぐらいに小さくなってきています。昨日よりも今日、今日よりも明日と、患者さんにとってよりよい医療を追求していくことは、医師になった者の務めだと思います。そのためには、先入観や偏見にとらわれない広い視野をもち続け、これまでの過程も尊重しながら、新しく良いものにもチャレンジしていくことが大切だと思います。

 年間の白内障手術件数が数百件という医師が多いなか、年間数千件の手術を手がけてなお、世界でも活躍される永原先生、三好先生、藤田先生、赤星先生の超人的な精神力と体力は、やはり各先生方の白内障手術に対する情熱からもたらされるものであろうと思います。この4 先生方以外にも、卓越した手術の技をお持ちで、日々白内障手術の研究を熱心にされている先生方は、国内にたくさんいらっしゃいます。いろいろな先生方の手術の話を通してわかっていただきたいことは、みなそれぞれ方法は違いますが、濁った水晶体を取り除くときに、超音波が目に与える悪い影響を限りなく少なくするため、できうる限りの工夫を続けているということなのです。これは表面的には決して見えることのない工夫です。イチロー選手と松井選手は打撃のフォームのタイプが違います。それでも打席に立つと二人とも、華麗にヒットを飛ばします。おそらくそれは、自分の身体に適したフォームのあくなき研究と、何万回という頭の中でのシミュレーションや、実際の練習の繰り返しによって生み出されているものに違いありません。白内障の手術にも、医師それぞれのスタイルがあります。私も常に啓発されながら、自分の手術を検証し、改善し、さらに正確な手術を追求していきたいと思います。

 ここ数年の間に白内障手術の世界では、20 年に1 度ぐらいの技術革新がもたらされました。それは、これまで使用されてきた単焦点眼内レンズに代わる、遠近両用(多焦点)眼内レンズの開発です。この遠近両用(多焦点)眼内レンズは、欧米では2 年ほど前から使われていましたが、日本では2007年の夏、厚生労働省により認可されました。これをうけて、当院でもこの2007年から、遠近両用眼内レンズを使用した白内障手術を始めました。欧米での報告によれば、この新しい遠近両用(多焦点)眼内レンズを使う白内障手術をした人の多くが、手術後は日常生活でメガネを使わずに生活しています。ただし日本では、この遠近両用(多焦点)眼内レンズには現在保険が適用されませんので、全額自費の手術となります。アメリカではレンズ代の補助がでているという話を聞きますので、日本でも今後行政に期待したいと思います。遠近両用(多焦点)眼内レンズを使用した白内障手術には、レーザーによる屈折矯正(LASIK)の設備と技術が必要です。私のところではすでに屈折矯正手術も1999年から行っておりますので、これまで別々に培ってきた白内障手術と屈折矯正手術の技術が、新しい白内障手術として共に役立ってくれることになり、とても嬉しく感じています。

 この文章を読んでくださった方々が、白内障手術は、多くの医師達の研究によって日々進化し続けているのだということをわかってくだされば幸いです。。

 

 

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よく来られる患者さんがお住まいの地域:大阪府(豊中市や梅田方面)、兵庫県(神戸市、西宮市、宝塚市、伊丹市、芦屋市、宝塚市、三田市)のほか、全国各地(和歌山県、岡山県、広島県、愛媛県、徳島県、神奈川県、青森県、北海道)からご来院いただいております。
当院は最新の眼科医療である多焦点眼内レンズによる白内障・老眼矯正手術を、 2007年12月に兵庫県で初めて行いました。
また白内障手術のプレチョップ法は、開発者の赤星隆幸医師から直接指導を受けています。
まずは TEL 06-6428-1515 までお気軽にお問合せ下さい。実績があります。

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