近視・遠視・乱視・老眼


このページは、近視・遠視・乱視・老眼について、一般の患者さんに対してわかりやすく説明しようという目的で書かれています。そのため、医学的な表現とは異なる部分がところどころにありますが、この点につきましてはご了承ください。なお、ここにある説明よりもさらに詳しく幅広い情報を知りたい人は、説明文章の最後に、日本眼科学会および日本白内障屈折矯正手術学会のホームページを学会の承認を得てリンクしていますので、そちらをご覧ください。


1.近視・遠視・乱視

私たちの眼は、カメラが写真を写す仕組みとよく似ています。カメラのレンズにあたるところは、私達の眼では角膜と水晶体、フィルム(最近ではメモリーカード)にあたるところは、網膜です。私たちがものを見ているときは、眼の中に入ってくる光が、角膜と水晶体で屈折して網膜のところで集まり、その状態が画像情報として電気的な信号になって視神経から脳に伝わります。脳が視神経から受け取った画像情報を処理したとき、私たちは「見えている」と感じています。

小学生のとき、理科の授業で、虫めがねで太陽の光を黒い紙の上に集めて、火をおこす実験をしたことがある人も多いと思います。レンズと紙の間の距離をうまく合わせると、虫眼鏡で集められた太陽の光が一点に集まって強くなり、紙が燃えます。このときは、レンズが作り出す焦点が、紙の位置とぴったり合っていて、光がいちばん強く集まる距離になっています。これと同じように、私達の眼のレンズ、すなわち角膜と水晶体が、眼の中に外から入ってくる光を屈折させて作り出す焦点が、網膜の上でぴったり合うときは、ものがはっきり見えていると考えられています。このような眼をもっている人は、一般の健康診断で行われるような、片目を黒いしゃもじのようなもので隠して行う視力検査(小数視力検査)では、1.0から2.0ぐらいの視力をもっています。もし、この焦点がうまく網膜の上で合わないと、近視か遠視です。近視は、眼の中に入る光が網膜よりも手前で集まる場合、遠視は、眼の中に入る光が網膜よりも後ろで集まる場合です。です。眼の中に入る光が網膜でぴったり集まる場合は、距離が正しく合っているので正視といいます。

眼科で視力の程度を考える場合には、私達が慣れている0.6とか1.0とかいう小数視力ではなく、+1Dや-5Dというような+と-のついた数字を使って表す方法があります。コンタクトレンズを使っている人は、箱にその数字が書いてあると思いますから、一度確認してみてください。この数字におけるDはジオプトリー(Diopter、ダイオプター)といい、レンズの屈折力を表しています。遠視は+D、近視は-Dで表すのですが、+や-は抜きにして数字が大きいほど、レンズの力が強い、つまり、近視も遠視も程度がきついということです。Dが0のときは、近視でもなく遠視でもない状態、つまり、正視の状態です。ただし、+0.1なら絶対遠視で、-0.1Dなら絶対近視かというと、そういうわけではありません。たとえば年齢でいうと、19歳11か月と20歳1か月は、たった2か月違うだけですが、年代でグループ分けをするときには、10代、20代となってしまいます。しかし、現実的にはそれほど変わりがないと思います。視力もそれと同じで、近視と正視のボーダーラインにいる人もいますし、遠視と正視のボーダーラインにいる人もいますので、ボーダーラインに近い人の場合は、ある程度そんな感じ、と考えるのがよいと思います。

弱い近視(軽い近視)や重い近視(強い近視)などの分類方法には、世界共通のこれといって絶対的なものはないようですが、最近の視力を矯正する手術(レーシック、PRK、ICLなど)ができる(合う)、できない(合わない)、の観点からいってわかりやすいと思われる近視と遠視の程度の目安を以下にあげてみましょう。

近視でも遠視でもない眼 (ゼロぐらいのDの眼)  Dが0 = 正常あるいは正視 (ノーマル) 正視の人は、遠くから眼の中に入ってくる光の焦点が網膜でぴったり合うので、遠くも近くもよく見えます。いわゆる「眼がいい」人です。 ※ただし、老眼になってくると、Dが0であっても、近くがだんだん見づらくなってきます。

近視である眼 (マイナスDの眼)

Dが-0.25 から -3.00 = 軽い近視 (マイルド)
D-3.25 から -6.00 = 中ぐらいの近視 (モデレート)
Dが-6.25 から -10.00 = 重い近視 (シビア)
Dが-10.25 あるいはそれを超える = 極度の近視 (エクストリーム)

近視の人は、遠くから眼の中に入ってくる光の焦点が、網膜よりも手前にきているので、近くのものは見やすいけれども、遠くのものは見づらいです。

遠視である眼 (プラスDの眼)

Dが+0.25 から+1.00 = 軽い遠視(マイルド)
Dが+1.25 から +4.00 = 中ぐらいの遠視(モデレート)
Dが+4.25 から +8.00 = 重い遠視(シビア)
Dが+8.00 あるいはそれを超える = 極度の遠視(エクストリーム)

遠視の人は、遠くから眼の中に入ってくる光の焦点が、網膜の後ろにできているので、遠くのものも、近くのものも、両方とも見づらいです。

上で説明したことを、下の表に簡単にまとめてみました。

graf

ただし、上の表の数字はあくまでも目安です。実際に遠谷眼科に来られた、30歳の、近視以外には特に眼の病気がない患者さんの眼で、裸眼視力が0.1の小数視力が出た20眼のDの内訳を調べてみました。結果は平均年齢は30.5歳、平均Dは-3.44D、範囲は-5.1Dから-2.5Dにわたっていました。患者さんの眼は同じ年齢でもそれぞれに違うので、同じDの数値をもった眼でも小数視力では違う数字がでるということがわかってもらえると思います。


2.老眼

老眼は、眼科用語では老視(ろうし)といいますが、カメラでいえば写真を撮ろうとするときに自動的にピント合わせをしてくれるオートフォーカス機能が働かなくなった状態が、眼の中で起こるようなことだと考えてください。 眼の中のオートフォーカス機能は、眼の中にある水晶体という部分が主に担当しています。 水晶体は名前のとおり透明で、弾力性があり、眼の中でカメラのレンズのような役割を果たしています。 遠くを見るときは、瞬間的に水晶体が薄くなり、近くを見るときは厚くなって、カメラでいえばオートフォーカスレンズの役割を果たしています。 この、水晶体が瞬間的に薄くなったり厚くなったりする作業が、加齢とともに水晶体の弾力性が衰えてくると、なかなかしづらくなってくるため、近くが見づらくなってくるのです。 眼科では、45歳という年齢が、老眼を自覚しやすい年齢の目安であると考えています。45歳のみなさんは、驚かれることと思いますが、眼はそのようにはなっているのです。 ちなみに、一番眼のコンディションが良い年齢は、19歳だといわれています。 最近、パソコンや携帯電話のメールの操作をしているときに目が疲れてきたと思ったら、老眼になってきているのかもしれません。そのまま頑張り続けるとよくありませんから、一度眼科で検査をしてみてください。


3.視力に関する注意点

私たちの視力は、いつも一定ではありません。遠谷眼科に来られた患者さんの視力検査の結果から受ける印象では、いつも同じ視力が出る人は、3人にひとりぐらいかなと思います。中には午前中と午後で視力が大きく変わる人もいます。 ドライアイになっていれば、自分の視力は小さいころからずっと1.0をキープしてきたと思っている人でも、パソコンの画面や携帯電話の画面を見ているときには、数十秒で視力が0.4ぐらいに落ちることもあります。 私たちの脳には順応力があるので、少しの視力の変化にはいつの間にか対応してしまうことが多いです。 しかし、前より視力が落ちたかもしれない、ずっと眼の調子が何となく悪いというような時は、何か眼の病気が隠れているかもかも知れないので、眼科で診察を受けてみてください。最近何だか曇って見えづらいなと思っていたら、実は網膜の病気だったというようなことがあります。

最近はパソコンや携帯電話などの操作をすることで、近くを見ることがとても多くなりました。 人間の眼は、もともとは数メートルから先の遠くを無理なく見るようにできていますから、近くを見るときには眼に負担がかかります。 ひと昔前なら、目の前30cmぐらいの距離でものをよく見るということがそれほど多くなかったので、1.5の視力が良い視力の代名詞だったかもしれません。 でも今ではその人の生活によってケースバイケースである、と考えることが必要だと思います。 特に遠視気味の人は、パソコン作業や携帯電話を操作するときには疲れやすいので、近くを見るとき専用の眼鏡を使う方がよいかもしれません。 左右の眼の視力のバランスが悪いと、疲労の原因になることがありますから、左右の見え方のバランスをとることも大切です。 子供の場合は、左右の視力が大きく違うと、視機能の発達が妨げられることもありますので、できるだけ早く眼科で検査と診察を受けて、眼鏡合わせをしてください。

<日本眼科学会のホームページ>
近視・遠視・乱視 http://www.nichigan.or.jp/public/disease/hoka_kinshi.jsp 老視 http://www.nichigan.or.jp/public/disease/hoka_roshi.jsp
<日本白内障屈折矯正手術学会のホームページ>
近視、遠視、乱視、老眼について https://www.jscrs.org/index/page/id/36#link1